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エネルギー分野のリーディングカンパニーを目指す
デジタルトランスフォーメーション(DX)への挑戦

アクセンチュア株式会社
取締役 常務執行役員
五十嵐慎二

関西電力株式会社
取締役 常務執行役員
稲田浩二

2016年4月1日、電力の全面自由化がスタートし、再生可能エネルギーや蓄電池による電力の分散化、脱炭素化など、大きな変化に直面するエネルギー業界。デジタルトランスフォーメーションを加速させる目的でアクセンチュアと共同でK4 Digitalを設立した、関西電力の取り組みを稲田浩二氏に伺った。

DXへの取り組みで、
ライバル企業を凌駕する

アクセンチュア株式会社 取締役 常務執行役員 五十嵐慎二

DXへの取り組みで、ライバル企業を凌駕する

五十嵐 デジタル技術は、さまざまな分野のビジネスに大きな変革をもたらしつつあり、エネルギー業界もその例外ではありません。
稲田 おっしゃる通りで、ライバル企業を凌駕するスピードでデジタル技術を活用した変革、すなわちデジタルトランスフォーメーション、DXに取り組まなければならないと考えています。短期的には新規事業や新サービスの創出に影響を与えますし、既存事業の収益力向上にもプラスのインパクトをもたらすでしょう。また、中長期的には大規模電源・系統電力を中心とした、これまでのビジネスモデルに大きな脅威をもたらす可能性があると考えています。
五十嵐 その中で2018年、岩根茂樹社長を委員長とするDX戦略委員会を立ち上げましたね。
稲田 はい。これは企画部門とIT部門が協同事務局となって立ち上げました。各ビジネス部門がDXをベースに自らの事業のトップライン向上やコスト競争力強化に取り組む体制を整えました。
五十嵐 DXを推進する組織を社内で出島のように独立させている企業もあります。
稲田 我々は、DXは一部の組織や社員が進めるものではなく、会社全体、グループ全体で進めるべきものだと考えました。言い換えると、各組織を含め、それぞれの部門で最適なデジタルトランスフォーメーションに取り組む必要があるということです。
DXで大きな成果を上げるためには、高度なデジタル技術が必要になるわけですが、高度なデジタル技術については、ビジネス部門それぞれが内製化するよりも、専門家集団を作って、その集団がDXの主役であるビジネス部門を側面から強力にサポートする体制が効率的かつ効果的だと考えました。

デジタルの専門家集団を育成する
K4 Digitalを設立

五十嵐 稲田さんの言葉の端々から、会社全体でデジタル改革をやるんだという強い意志が伝わってきます。しかし、デジタル人材が急に育つわけではありません。
稲田 これまでにも社内でデータアナリストの育成を進めてきましたが、その延長線上ではスピードが追いつきません。前進することはできても、ライバル企業を圧倒するスピードでなければ意味がないのです。そこで非連続な体制強化が必要と考え、アクセンチュアさんとの協業により、デジタルの専門家集団としてのK4 Digitalを設立することにしました。
五十嵐 アクセンチュア自体が、約6年近く前からデジタル化に舵を切りました。何と、デジタル関連の売上げが、昨年度ついに全体の50%を超えました。つまり、デジタル絡みの仕事が、いまや多いということです。そういった中で、さまざまなタイプのスキルを持った人材が必要であるということを認識し、育成や再教育をしてきました。
稲田 パートナーとしての御社の魅力は、最新デジタル技術に関する知識・情報が豊富であり、高度なデジタル人材を多数有していること。それに加えて、グローバルでエネルギー業界に精通しているということです。
五十嵐 ありがとうございます。アクセンチュアには、データサイエンティストやAI、ブロックチェーン、量子コンピューティングなどの先端技術に精通した人材から、デザインやカスタマーエクスペリエンスに精通した人材がおり、チームを組んで支援をさせていただいています。
DXで重要なのは、良質なデータを収集・蓄積して活用することに加え、いかに各事業部門、ビジネスサイドと足並みを揃えるかだと思います。その点についてはいかがでしょう。
稲田 高度で専門的なデジタル技術を有する人材をK4 Digitalで確保・育成して、そのK4 DigitalがDXの主役である各ビジネス部門を能動的にサポートするという体制でやっています。技術的なサポートによるPoC(Proof of Concept:概念実証)の推進にとどまらず、各ビジネス部門のDX計画策定やデジタル人材育成もサポートする。決して受動的なサポートではなく、あくまでもK4 Digitalのお客さまであるビジネス部門とともに、ビジネス課題を明確にし、デジタル技術の活用テーマを掘り起こして、PoCをスピーディーに回していくという、提案コンサル型の能動的なサポートがポイントだと思っています。

「くろよん魂」と「デジタル技術」で大変革を
実現する

五十嵐 取り組むべきこととして、どこに対象を絞っていますか。
稲田 第一に、関西電力全体の業務効率化や自動化等による「生産性の向上」、第二に、エネルギー領域、非エネルギー領域における新サービスの開発や新規事業の立ち上げなどの「新たな価値の創出」に取り組んでいきたいと考えています。
五十嵐 いま、K4 Digitalの中には、多様な人材がそろい始めています。関西電力とアクセンチュア、双方の人材が交ざり、DXに必要な人材の端から端までを有して一緒に仕事をしていく中で、個々のメンバーのスキルが加速度的に向上するでしょう。
稲田 そうですね。関西電力グループも3年前からイノベーションに本気で取り組み始めました。イノベーションを進めるうえで、重要な要素がダイバーシティ、多様性だと思います。まさにK4 Digitalという会社は、多様な価値観を持った人たちの組織であり、それがプラスにはたらいていると思います。
五十嵐 K4 Digitalという社名にも、強いメッセージが込められているのですね。
稲田 関西電力には「くろよん魂」という言葉とマインドが脈々と引き継がれています。これは、映画やテレビドラマにもなった黒部川第四発電所(通称:くろよん)の建設の際に発揮された「くろよん魂」、困難なことにチャレンジして最後までやり遂げるというマインドを表しています。
K4 Digitalという社名は、この「くろよん」のような関西電力の歴史に残る大変革、偉業を、今度は「くろよん魂」と「デジタル技術」で実現するという意味を込めて名づけたのです。

関西電力株式会社 取締役 常務執行役員 稲田浩二

「くろよん魂」と「デジタル技術」で
大変革を
実現する

サービス開始から4カ月。成果への期待が高まる

五十嵐 9月1日のK4 Digitalサービス開始から4カ月が経過しました。手ごたえはいかがですか。
稲田 順調なスタートダッシュが切れたと思います。非連続な強化だからこそ、この短期間で期待を超える成果を出せているんだと思います。K4 Digitalにとってのお客さまであるビジネス部門からの信頼感、期待感も、多少の温度差はありますが、着実にアップしていると思います。
五十嵐 この4か月におけるPoCの推進については、いかがですか。
稲田 20件の分析案件のPoCやチャットボットなどのAI案件を手がけています。生産性向上の案件がいまは中心ですが、徐々に新たな価値創出の案件も増えてきています。20件のうち8件はPoCも終わり、それらを実行した場合のNPVは数十億円のレベルに達しています。今後は、これらを実行に移していくのが重要だと思っています。
ビジネス部門のDX計画策定支援については、3つの部門を重点的に支援しています。部門のビジネス課題分析やデジタル施策への落とし込み・評価などを実施しています。
五十嵐 働き方の面ではいかがでしょうか。
稲田 K4 Digitalの中で、働き方の面でも、互いに学びあえる環境があると思います。成果へのこだわりや仕事のスピード、デジタルネイティブなワークスタイルやマネジメントスタイルなど、企業文化の違い、つまりダイバーシティゆえに互いに学ぶことができる点が多々あると思います。
これまでデータ分析を中心に進めてきましたが、デジタルという中でもっと広い範囲に期待していて、AI、IoT、VR・AR、さらにはブロックチェーンなども含めて、デジタル技術全般に関する専門家集団でありたいので、その分野における貢献を今後ますます期待したいと思っています。
五十嵐 アクセンチュアとしても、K4 Digitalのスタートの時は、電力業界に精通しているコンサルタントのメンバーと、データサイエンティストなどが中心となって立ち上げました。これからは、AIやIoT、アプリケーションのデザイナーや、基盤の整備をする人など、幅を広げていきたいと考えています。

K4 Digitalを設立した関西電力の稲田浩二氏に
同社の求める人材像や人材の育て方を伺った。

人材戦略のキーワードは、「スペシャリティ」と「ダイバーシティ」

人材戦略のキーワードは、「スペシャリティ」
と「ダイバーシティ」

五十嵐 2000年以降、関西電力さんは、電力事業以外のグループ事業、情報通信事業や不動産事業、暮らし事業などにも積極果敢にチャレンジしてきましたね。
稲田 はい。当社は「挑む」をキーワードに電力業界の中でも積極的に多角化を進め、グループ全体での成長を実現してきました。
五十嵐 デジタルトランスフォーメーションを推進する中で、求める「人材像」に変化はありましたか。
稲田 関西電力がお客さまに選ばれ、競争に勝ち続け、持続的に成長するために必要な変革と挑戦を後押ししていくにあたり、2つのキーワードを重視しています。一つは専門性、「スペシャリティ」です。もう一つは多様性、「ダイバーシティ」です。
五十嵐 「スペシャリティ」と「ダイバーシティ」。これはアクセンチュアでも同じです。
稲田 「スペシャリティ」は、ナレッジ面で求めていることであり、まさにK4 Digitalが目指しているような、データアナリシスやデータマネジメント、AI、IoT、アジャイル開発などについての高度な専門的ナレッジです。また、今まで以上に色々なスキルを持ったタイプの人材が共創していく中、ダイバーシティを受け入れ、力に変えられる文化の醸成は必須だと考えます。もちろん、マインド面では、従来から重視していた、「使命感」や「コミュニケーション能力」に加え、「創造力」や「チャレンジ精神」が、より重要になっていくことは言うまでもありません。
デジタルに関する専門性を持ち、多様な仲間と共に創造力、チャレンジ精神を発揮したい、という方には、ぜひ当社に来ていただきたい。そしてDXの最前線、ビジネスの最前線で活躍してほしいと思っています。
五十嵐 デジタル人材に対しては、各業界からの需要が高まっていますが、デジタルの専門性を武器に、エネルギー業界を変えていきたいと思うなら、関西電力さんは素晴らしい活躍の場になりそうですね。
稲田 ありがとうございます。デジタルそのものを価値として提供したいと考える人たちは、それこそアクセンチュアさんに入るという選択肢もあるでしょう(笑)。しかし、デジタルを使ってエネルギーや情報通信、不動産、暮らしなどの事業分野で価値を提供し、エンドユーザであるお客さまの生活や企業活動そのものを変えたい、イノベーションを起こしたい、と考える人には、ぜひ関西電力に入社してほしいですね。

関西電力グループアカデミーを立ち上げ、
デジタル人材育成を目指す

五十嵐 デジタル強化へのシフトに向け、既存社員を「デジタル人材化」する教育、育成の仕組みを、どのように考えていますか。
稲田 必要なデジタル人材を、抽象的に「デジタル人材」とまとめてもいけないので、4つの段階で定義しています。
高度な分析ができる、データ分析のプロフェッショナル。その次が、定式化が容易な分析ができる人材。これらが、データ分析のプロです。次に、自分で分析はできないが、データ分析をする人と対等に対話ができ、自分たちの仕事を変えていくことができる人たち。最後は、可視化ツールで集計・見える化ができる人材です。
こうした段階を定義して、それぞれのビジネス部門でどの層にどのくらいの人材が必要かを考えます。
五十嵐 データ分析のプロは、何人くらいが必要だと想定していますか。
稲田 データ分析のプロは、K4 Digitalとビジネス部門を合わせて100名規模で考えています。当社は約2万人の会社です。0.5%程度がデータ分析のできる人材として必要になるでしょう。彼らをK4 Digitalなどに配属して、OJTで育成していくことになります。
全体としては数百名規模で必要だと考えています。
五十嵐 昨年(2018年)、「関西電力グループアカデミー」を立ち上げましたね。
稲田 はい。これまで実践してきた「人を大切にする」という考えとともに、「厳しい競争環境で勝ち抜くには人材の育成が最も大切である」という会社の思いを込め、社長を学長とする関西電力グループアカデミーを開校しました。その中の研修プログラムの一つとしてデータ分析の基礎研修などを準備しています。自分でゴリゴリ分析をするわけではないのですが、分析者と対等に対話してビジネスを変えていく人材を育てていきたいと考えています。
それ以外にも、2万人近い社員がいるわけですが、現場第一線の社員を含め、すべての社員にも、データを活用することの重要性やデジタルで何が実現できるのかといったことを理解してもらい、現場発のDXも進めていきたいと考えています。
そういう意味では、すべての社員にデジタルリテラシーを持ってもらうことを目指しているということです。全社員対象の研修プログラムの中にも織り込んでいきたいと思っています。

関西電力グループアカデミーを立ち上げ、デジタル人材育成を目指す

意識改革のトリガーとなるK4 Digitalという場

五十嵐 アクセンチュアは元々コンサルティングという職業柄、能動的に提案していく姿勢を持った人材が多くいます。K4 Digitalにもそういったマインドを強く持ったメンバーがサービスを提供させていただいており、関西電力さんの各事業部門に対して、こちら側からいろいろなDX活用プランを能動的に持ちかけています。一緒に働く中で、そうした、コンサルタントの良い部分がK4 Digital全体にプラスの影響を与えるとよいかと思っています。
稲田 アクセンチュアさんには、すでにデジタル人材の定義や研修プログラムの整備、K4 Digital社員へのOJTなどで貢献いただいていますが、今後はデジタルの効果・メリットを全社員に実感してもらうために、トップダウン、ボトムアップの両面からの啓発活動が必要になります。そういう活動の企画提案も期待しています。
また、おっしゃるように、K4 Digitalで一緒に働いている社員の意識改革、マインド面での成長につながることも期待しています。
五十嵐 関西電力さんのデジタルトランスフォーメーションが進み、人材を育成されていくと、デジタルの専門家としてサービスを提供させていただいている我々アクセンチュアとしてはその1歩も2歩も先を走り続けないと価値を認めて頂けなくなってしまいますね。プレッシャーもあり大変ですが、頑張ります(笑)。

新たな価値を生み出す挑戦が続く

五十嵐 最後に、デジタルトランスフォーメーションによる領域に留まらず、関西電力さんが今後挑戦したいビジネス領域やお客さまに提供したい新たな価値など、将来に向けた展望をお聞かせください。
稲田 2019年春に打ち出す予定の新しい中期経営計画では、エネルギー分野、非エネルギー分野ともに、新たなチャレンジをしていこうということで、いくつかのビジネス領域を設定し、計画を具体化しているところです。いずれの領域においても、「お客さまにとっての価値」「社会にとっての価値」に徹底的にこだわることが重要だと思っています。エネルギー領域で非連続な変化が起こる可能性がある中で、ひょっとしたらジレンマとなるかもしれない領域にも果敢に挑戦していきたいと思っています。 デジタル技術の進展により、お客さまや社会に「より大きな価値」、あるいは、これまでには実現できなかった「新たな価値」を提供できる可能性が広がっていると思います。デジタル技術は、今お話ししている間にもどんどん進化を続けています。アクセンチュアさんにも、常に「新しい価値」を生み出すような提案を、当社グループに適用可能な形で提案し続けていただくことを期待します。
五十嵐 最近、業界の壁が薄れていく中、我々コンサルタントの中でも、業界の壁を越え、異なる業界の専門性を持つコンサル同士がコラボレーションする事例が増えています。業界の壁がなくなっていくことは、脅威でもありチャンスでもあります。今は関西電力さんの直接的な競合でなく、別の産業やセグメントに属する企業であっても、近い将来、競合になるかもしれませんし、あるいはまた、そういうところに踏み込んでいくことで、関西電力さんのさらなる成長の機会があるかもしれない。そういった面でも、今後新しい提案ができればよいと考えます。「アクセンチュアはポケットがたくさんあって、いろいろ持っていていいね」と言っていただけるよう、今後も研鑽を積み重ねていきたいと思っています。 本日は貴重なお話しを賜り、ありがとうございました。

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